視神経炎

南東北眼科クリニック医師と看護師

視神経は、眼球(網膜)で集められた外界から光の情報を脳に伝える神経線維(電線に例えられる)の集まりです。この電線のもとになる神経細胞は網膜にあって、そこからの情報を伝達してはじめて、脳で意味のある「ものを見る」ことができます。この電線になんらかの障害を起こす病気を「視神経症」、その炎症を「視神経炎」と呼びます。原因がはっきりしていることもありますが、不明な場合も多くあります。

視神経と眼球

検査

眼底検査・蛍光眼底造影

眼底検査・蛍光眼底造影

視野検査

視野検査

中心フリッカー(点滅する光のちらつきを見ることで、視神経の感度を調べます。)対光反射で患眼を確認します。

視神経症の分類、治療

特発性視神経炎

特発性とは原因不明の意味です。20代から50代の、女性の方がやや多い疾患です。

視神経乳頭が赤く腫れる「視神経乳頭炎」と、視神経乳頭には当初所見がなく正常にみえる「球後視神経炎」があります。球後視神経炎は視神経以外の脊髄や大脳の白質(神経線維の集まり)にも病変が及ぶ多発性硬化症の一部になることもあります。

症状

片眼または両眼の「視力低下」、眼球を動かすときの痛む「眼球運動痛」、見ようとするところが見えない「中心暗点」や全体に霧がかかるとか、視野の一部からだんだん見えにくくなる「視野欠損」がみられます。

治療

自然回復が主流です。治療は程度、病態分類などで異なりますが、通常、副腎皮質ステロイドやビタミン薬の点滴が用いられます。

抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎・抗MOG抗体視神経炎

「アクアポリン」とは、細胞膜に存在する細孔を持ったタンパク質で、水分子のみを選択的に通過させるため“水分の通り道”です。この一種であるアクアポリン4に対する抗体が作られ、脳・脊髄・視神経の毛細血管に炎症が発生します。ほとんどが女性に発症します。

「MOG」とは髄鞘(ミエリンオリゴデンドロサイト)にのみ存在する糖タンパク分子で、抗アクアポリン4抗体は陰性です。発症年齢は20~30代に多く、男女差はありませんが、やや男性に多く発症します。

抗MOG抗体陽性視神経炎

「MOG」とは髄鞘(ミエリン)オリゴデンドロサイトのみに存在する糖蛋白分子で、抗AQP4抗体は陰性です。発症年齢は20〜30代に多く、男女差はありませんが、やや男性に多く発症します。

症状

両眼を侵し、重篤な視力低下を生じます。

治療

メチルプレドニンの大量療法が用いられます。反応が乏しい場合は血漿交換療法、免疫抑制薬や大量ガンマグロブリン治療が応用されます。いったん改善しても再発の可能性が高く、副腎ステロイドなどによる維持治療が必要になります。

虚血性視神経症

特発性視神経炎と並んで視神経症の二大疾患といわれています。視神経の栄養を与える血管に循環障害が起こる病気です。多くは高齢者の片眼に生じやすく、ほとんどの場合は、高血圧、糖尿病、高脂血症、心疾患、血液疾患などの全身の危険因子が存在します。

症状

ある日ある時間に突然視力低下や視野欠損が起こるのが特徴です。

視野では、見ようとするところが見えない「中心暗点」や下半分あるいは上半分の視野がみえない「水平半盲」がよくみられます。

治療

副腎皮質ステロイド薬の点滴治療がおこなわれます。

視野障害と中心暗点

外傷性視神経炎

落下事故、交通事故などで前額部を強打した場合に、片側の視神経管内の視神経が挫滅して視力・視野障害が起こることがあります。

治療

受傷早期(通常24時間以内)であれば、副腎ステロイドの大量投与がおこなわれます。その他に、中毒性、遺伝性、腫瘍などによる圧迫性視神経症などもあります。

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